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てすとてすと

てすとてすと。
ただいまテスト中。


続きから昔書いた散文で長文テスト。

 這う這うの体で漸く駐屯地まで戻ってきて、顔見知りには今度こそ死んだと思ったぜなんて軽口で迎えられて。そして向かった将校用テントで大隊長から与えられたのは束の間の休息に関する指令だった。ハッキリとした休みが貰えたのは此処に来て久しく、それはそれは珍しいこともあるものだと嬉々として受けてどうやって部下たちへ説明したものかと考えて、からハッとする。
 与えられた時間――其処から先ず食事に掛かる時間と今夜の奇襲戦に関した作戦会議の時間とをマイナスする。そして明らかに目減りした残りの時間から、徹夜で行進し戦闘を続けた所為で極限まで減少した気力体力の回復をやっと図れると、一息ついてしまった隊員全体に説明して、無理やりにでもやる気を出させて準備をさせて、そんな時間をマイナスしてみた。さすればなんたる悲劇、睡眠時間は良くて30秒といったところだった。因みに食事の時間は配給を受け取るまでの時間しか計算に入れていない。食事を口に運ぶ時間はカットで計算してこの時間だ。これホント。
 って、それって、……マジで?
「……やっ、て、らん、ね――――ッ!」
 恐らくもう声はテントまで届くまい、そう思える程度には十分な距離のある物陰に入った処で手近な小石を蹴り上げた。ところが其れは小石ではなく只の砂の塊りで、衝撃を受けるなり砂埃ごとさらさらと粉砕されてくれたものだから苛々は余計募るばかりで。畜生、そう叫びながら今度は地面を蹴りつける。コンクリート舗装された地面とは程遠い、乾燥した砂の感触が身体に伝って、更に酷い砂埃が舞い上がった。 
 逃げることも出来ず思い切り吸い込む。当たり前のように、げほげほと咽た。
 ……我ながら阿呆だ。本当に。
 でも其れってあれだろうか、自分たちに死ねと言いたいのだろうか。
 というよりも寧ろ、“休むのは退役後にしろ”という無言の要求の現われの気もしないでもない。上の人間にとって自分たちは只の捨て駒なのだと、自分たちの盾に成ってさえ居ればいいと思われているのだと。改めて、思い知らされた気がした。


 食料配給の列は何時もながら長蛇の列で、並ぶ気さえ起きなかった。だから何時の間にか其処に巻き込まれていたのはもう惰性、というか反射だろう。寧ろ本能だろうか。並ばなければこの先最低でも三日はまともな食料など胃に入れることは出来ず、只でさえ不明瞭な未来がマイナスに傾くのは確実だった。それにしても並んだ記憶さえないのはいただけ無いのではないか? ジーザス。前回の銃撃戦で、まともな思考回路の一部を鉛玉に持っていかれたと見える。
 どうにも手持ち無沙汰になって、爪の間に砂やらゴミやらの詰まった薄汚れた右手を、ゴシゴシと上着に擦り付けた。それから、最早ボロ切れと化したズボンの申し訳程度に体裁を保ってくっ付いたポケットに突っ込んで、懐中時計を引っ張り出す。肌身離さず身に付けている其れは小さな疵がいっぱいに付いてしまっていたけれど、幸運にも大きな外傷を受けることなく、今も正確な時を刻んでくれていた。ぱかり、軽い音と共に上蓋を開く。
 イチロクニイマル。すっかりと戦地仕様に作り変えられた思考回路が現在時刻を読み取った。その時計の鎖に繋がれた指輪が、傾き始めた日差しを受けてちいさく煌めく。
 いいえ今日はハチガツジュウヨッカ、今はゴゴヨジニジュップンよ、マース。そう、言っているように見えた。どうにもイカレタ頭に成ってしまったらしい。ほんの少し列が動いて、俺も一緒に、前へと進んだ。
 此処に来て、沢山のものが俺の両手から零れていった。
 士官学校時代の級友。親しくなった部下、通信兵。
 両親。幼馴染。ふるさとの暖かな思い出。そして、愛しい彼女との幸せな未来予想図。
 
 だからこれは、数少ない俺の持ち物の一つだ。
 失いたくない。――失えない。
 また一歩列が前に進んで、時計の針はかちりと、またちいさく時を刻んだ。


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