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七夕

EE一回目放送分を見て。ずっと放置していたので今さらだけどあげてみる。



じゃあ、キョンも古泉君もまっすぐ家に帰りなさいよ、とハルヒは妙にテンション高く颯爽と長門の部屋の中に消えていった。促されるがままにその後を追う朝比奈さんも、「今日は貴重なものをみれてうれしかったです」とにこにことしていらした。眼福だ。部屋の主のはずなのに最後まで玄関先に残ってくれた長門はといえば、その無機質な瞳をぱちりとまたたかせて、きをつけて、とたった五文字されど五文字、の言葉を投げて扉を閉めた。きちんとロックがかけられるところまで確認する。まるで側から見たら玄関先で門前払いを食った男のように見えそうな俺と古泉は、そこでようやく、重い荷物を引きずって、否天体望遠鏡なんてものを引きずれるわけがないので分担して必死に抱えて、長門のマンションを後にするに至った。
 思えば、夜道を古泉と二人で歩くなんてこと、初めてかもしれないな。
「こうして、あなたと二人で歩く日が来るなんて思ってもみませんでしたよ」
 古泉はまるで俺の思考をトレースしたんじゃないだろうかというくらい見事にだだ被りした台詞を吐いた。思わずまじまじと見つめてしまう。嫌に整った顔を、いつもよりも若干年相応に綻ばせている古泉は、「しかも天体観測の帰りだなんて、うれしいことです」と宣った。こいつ、素面でそんな台詞を口にできるとは真面目にただ者ではないな。
「そういやおまえ、天体観測が趣味だなんて初めて聞いたぞ」
「それはまあ、初めて言いましたからね」
そもそもあなたにこんなことを打ち明ける日が来るとは思いませんでしたし言うつもりもありませんでしたよ、と古泉は今にも鼻歌でも歌いだしそうな表情でぺろりと口にした。
「珍しく饒舌なことだな」
「そうですか?」
 あなたはいつも僕にうるさいだまれ、なんて不機嫌顔で言うではないですか矛盾していますよと古泉はなんとなく感情を読み取れそうな、幾分か優しげな瞳を俺に向けた。通りに出ればちょうど駅から電車が出たばかりらしく、目の前のフェンス、その向こうをゆっくりと、昼間ならばあずき色に見えているだろう車体が、駆け抜けていく。
「そうじゃなくてだなあ、」
「わかってますよ」
 こうして、友人たちと駆け回れる夏休みなんてほんとうに久しぶりのような気がして。そこに、天体観測ですからね。ナチュラルハイなのかもしれません。
 古泉はそう言って、ずるりと落ちかけた望遠鏡セットを抱え直した。
 車が来ないのを確認して、そそくさと反対側へと渡る。そこから駅までの数十メートルがとても近くて、もう少し長引けばいいのに、引き延ばされればいいのになんて思ってしまうのは、やっぱりおかしい。
 静かな夜の気配に、酔っ払っているのかもしれなかった。
「……もっともっと、続けばいいのにな、夏休み」
「そうですねえ」
 俺たちは珍しく笑い合いながら、ただ暗い夜道を、歩いていた。

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