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衝動に駆られた

ので
ものすごうく久々ですが「Save Our Soul,please.」続き。





ぴんぽん、とインターフォンを押して長門さんは扉を開けた。がちゃり、重い音。子どもの手で開けるには、とてもとても重い音だ。
インターフォンを押した理由は何だろう。
「入って」
うすく開かれた扉に身体を半分押し込むようにしている、扉が重いのだ、慌てて僕は分厚い鉄板でできたそれを支えた。子どもの頃、玄関の扉はこんなにも重かっただろうか。そういえば自分自身先程そうして家を飛び出してきたはずなのに、手のひらにはさっぱりそんな感触は残っていなかった。というか、自分で元来た道をたどってあの家に戻ることができるかすら、危ういような気がする。
ばたん、と閉まる扉を眺めながらそんなことをつらつら考えていたので、
「お帰り、お昼ごはんできてるわよ――あら、いらっしゃい」
降ってきた声にびくりと体を揺らしてしまった。
「ただいま」
表情の読めない顔をくっと向けて、長門さんは目の前の女性に向かって言葉を投げた。目の前の、
昨夜まで見ていたアニメーションに出てきた母親と瓜二つの女性に。
くらり、眩暈を覚えてでも、予感めいたものがなかったわけではなかった。
首のあたりでまとめられた長い髪、エプロン。やわらかい笑み。
「いつきくんも、ご飯食べてく? 今日はオムライスなの、ごはんも余っているからもしお腹がいっぱいじゃなかったら、有希と一緒に食べていって」
私はこれから、ちょっとお出かけしなくちゃいけないのだけれど。
確かにエプロンの下はよそ行きらしい服装をしていた彼女はそう言って、返事を待たずにくるりと踵を返した。ぱたぱたとスリッパの軽い音。そうして、「入って」いつの間にか靴を脱いでフローリングに上がっていた長門さんに再び、促される。
「……おじゃま、します」
じゅう、とフライパンの上にたまごが流し込まれていく音がする。テーブルの上には、既にオムライスとジュースの注がれたコップが、ワンセット。導かれるままに長門さんの対面に座る、キッチン、鮮やかな手つきで生まれる、もう一つのオムライス。
「はい、どうぞ」
ことり、と置かれたその表面には、ケチャップで『いつき』と書かれている。見やれば長門さんのそれには――『ゆき』。
スプーンとコップと、それからアップルジュースの紙パックがテーブルの上に並べて、「じゃあ行ってくるわね」遅刻しちゃうわ、とエプロンを解く、彼女は僕自身が描いていた、テレビの中に記憶していた母親像よりも、少しばかり幼く、若々しく見えた。
ガシャン、
扉が閉じられる。
「――――」
 ながとさん、と唇を動かすと彼女はこくりと頷いて、もう大丈夫、心配いらない、とよく判らないひとり言のようなことを口にした。
 僕は、朝比奈さんに会うためにここに来たのではなかったのか。
 彼女の視線が、リビングとして機能しているのだろうそこの右、ほんの少しだけ隙間の開けられた扉の向こうに、伸びる。
「出てきて」
 扉が、揺れた。


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